純銅の切削加工

しかし、その高い延性ゆえに「切粉がつながる」「バリが出やすい」といった加工上の課題を抱えています。切削加工においては、材質特性を理解したうえで工具選定や加工条件を工夫することが不可欠です。
本記事では、純銅の代表的な種類や、切削加工を安定させるためのポイント、実際の加工事例について解説します。
純銅の種類
純銅は、99.9%以上の銅を含む高純度材料であり、優れた導電性・熱伝導性を持つため、電気・電子部品や熱交換器など幅広い分野で使用されています。その中でも、代表的な種類として以下が挙げられます。
タフピッチ銅(C1100)
最も流通量が多い純銅で、電気伝導率が高く、電線や母線、電気部品に広く利用されています。ただし、酸素を含むため、水素脆化の問題があり、真空や還元性雰囲気での使用には注意が必要です。
りん脱酸銅(C1201、C1220)
微量のリンを添加することで脱酸した銅で、水素脆化を防止できるのが特長です。C1201は高い電気伝導率を維持しつつ、加工性も良好です。C1220は耐食性が高く、配管材や熱交換器のチューブに多用されます。
無酸素銅(C1020)
酸素をほとんど含まない純銅で、極めて高い電気伝導率と熱伝導率を誇ります。真空環境下でも安定して使用できるため、半導体製造装置や精密電子部品に採用される高級材です。
このように、純銅といっても特性は種類ごとに異なるため、用途に応じた選択が不可欠です。
純銅の切削加工のポイント
純銅は優れた導電性・熱伝導性を持つ一方で、切削加工においては「延性が高い」ことが大きな課題になります。柔らかくねばりがあるため、以下の点に注意する必要があります。
切粉がつながりやすい
銅は延性が高いため、切削中に切粉が長くつながりやすく、工具やワークに絡まるリスクがあります。この対策として有効なのがインチング加工や振動切削です。切削のリズムを意図的に変化させ、切粉を分断しながら加工を進めることで、安定した加工が可能となります。
バリが発生しやすい
純銅は刃先でのせん断がきれいに進みにくいため、切削端面にバリが残りやすいです。対策としては切削速度を上げ、切削抵抗を下げることが有効です。ただし、 純銅は熱伝導性が高く、速度を上げすぎると切削熱により工具刃先に銅が溶着しやすくなるため、油性クーラントの使用が必須です。適切な冷却と潤滑を行うことで、刃先への溶着を防ぎ、仕上げ精度を安定させることができます。
純銅の切削加工事例:車載エアコン用パイプ
こちらは、材料:純銅(C1100)、サイズ:φ10mm×82mmの車載エアコン用パイプです。
汎用の工具ではなく、切りくずの絡みを防ぐ特殊な刃具を新たに製作しています。これにより、切りくずの排出性を改善し、加工の効率と品質を確保することができています。
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純銅は種類によって特性が大きく異なるため、用途に応じた材料選定と、それに適した切削条件の設定が求められます。特に、切粉処理やバリ対策、熱による刃先溶着防止といった細やかな工夫が、安定した加工品質を実現するポイントとなります。
当社では、純銅特有の課題に対応するための専用刃具や加工ノウハウを活かし、高精度かつ効率的な加工を提供しています。純銅の切削加工でお困りの際は、ぜひご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました!