SUS440Cの切削加工
SUS440Cとは
SUS440Cはマルテンサイト系ステンレス鋼の一種であり、数あるステンレス鋼の中でも、熱処理後に最も高い硬度を発揮することで知られています。その特徴は「高い硬度」と「優れた耐食性」にあります。
この高い硬度を持つことから、JIS規格で定められたステンレス鋼の中でも「加工が最も難しいステンレス鋼」とされています。
SUS304とSUS440Cの違い
SUS440Cは先述した通り、非常に高い硬度と優れた耐摩耗性を持つことが特徴です。そのため、高硬度が求められる部品や工具、耐久性が重要視される用途で広く使用されています。一方、耐食性ではオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304に劣るため、環境や用途に応じた適切な選択が重要です。
「高硬度」や「耐摩耗性」を重視する場合にはSUS440Cが適しており、一方で「錆びにくさ」や「耐食性」を重視したい場合にはSUS304が選ばれる、といった使い分けが一般的です。
SUS440Cの切削加工における3つのポイント
SUS440Cは、加工時に発生する切粉が他のステンレス材と違います。また、上記で述べている通り、硬度と強度に対する加工時の対策が必要となります。下記にて3つのポイントを紹介いたします。
①SUS440Cを切削する際の工具選定
SUS440Cは熱伝導率が低く、加工時に熱が溜まりやすいです。そのため、工具に熱がこもりやすく、工具寿命が短くなり、コスト増加の原因となります。これを防ぐためには、コーティング処理を施した超硬工具など耐摩耗性の高い工具を選ぶことが重要です。
また、切れ味の良い刃物を選択することで、切削抵抗を低減し、工具寿命を延ばすことができます。
②振動切削により切粉を切れやすくする
SUS440Cの切削加工では、工具とワークの間に切粉が詰まりやすいです。振動切削を活用することで、この課題を解決できます。振動切削は、ワークを切削方向に振動させ、主軸回転と連動して切削を行う方法です。この手法により、エアカットの時間を設けて切粉を細かく分断し、詰まりを防ぎます。
当社では振動切削機能付きの自動盤を使用しており、効率的な切粉処理が可能です。また、加工硬化しやすいSUS440Cに対応するため、取り代を十分に確保して加工を進めることも重要です。
③クーラントの使用方法の工夫
クーラントは、ワークと刃具の潤滑・冷却・洗浄を行い、切削加工時の発熱を抑える役割を果たします。SUS440Cは切削時に熱が逃げにくく、高温になりやすいため、クーラントの使用が不可欠です。
当社では高圧クーラントを利用し、切削点にピンポイントで供給することで刃具を効率的に冷却しています。また、クーラントの流量を増やす工夫やオイルスルーホルダーを活用した刃先の冷却対策を行い、刃具の寿命延長と切粉処理の効率化を実現しています。
SUS440Cの切削加工事例
インジェクター用ボデーバルブ
こちらはインジェクター用のボデーバルブです。材質には電磁ステンレスを使用し、自動盤で製作しています。精度は内径・外径ともに公差20μm、面粗度は6.3をクリアしています。
加工の重要なポイントは、底面の面粗度を高精度に維持している点です。内径1.08mmの底面部分はザグリ形状になっており、特に面粗度が求められますが、本製品では底面の中心部に至るまで一貫して面粗度6.3を確保しています。
エンジン向け高圧ポンプ用部品
こちらはエンジン用高圧ポンプ向けの部品です。材質は電磁ステンレスを使用し、自動盤で加工した後、各種表面処理を施しています。生産はベトナム工場で行っており、精度は内径・外径の公差20μm、外周面粗度2sをクリアしています。
加工のポイントは、各種表面処理により微細なバリを除去するとともに、硬度の向上や面粗度の改善を実現している点です。本製品では、自動盤での加工後にショットブラストを行い、4つの穴の端面に発生する微細なバリを除去しています。また、熱処理により硬度を向上させ、さらにバレル研磨を施すことで外周面粗度を向上させ、外周面粗度Rs2をクリアしました。ショットブラストとバレル研磨はベトナム工場で実施し、熱処理は協力会社で対応しています。
SUS440Cの切削加工は当社にお任せください!
こちらの記事では、SUS440Cの切削加工についてご紹介しました。
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